美術科非常勤講師として生徒を送り出す

地元にある北海道立富良野高等学校の美術科非常勤講師に就いて7年目。1月末で3年生の授業は全て終了し、生徒たちは3月1日の卒業式(と前日の予行演習)を残すのみで学校に来なくなります。先日、3年選択生2名の最後の授業を終えました。最後は恒例の卒業制作、富良野高卒業生で現在中富良野町で革製品の職人になった先輩のショップ「medicine leather」さんへ赴き、先輩に教わりながら素敵な革の小物トレーを作りました。教室での授業ではなかったのもあって、特にかしこまったお別れの雰囲気でもなく、「おつかれさま、じゃあね」と授業を終えましたが、もう彼らとの授業がないことを思うとじわじわと思いが湧いてきます。1年生から3年間、美術の授業を続けて選択するだけでひとつの大きなご縁。1年生は音楽・美術・書道の芸術3教科のどれかを選択しなくてはならないので美術の生徒数も結構多いのですが、受験を含めた進路の兼ね合いで2年次、3年次と選択生はどうしても減っていきます。それでも彼らが美術の科目をずっと選んでくれたことに対し、講師という立場からも感謝の気持ちでいっぱいです。門出を見送った生徒たちは必ずしも皆が美術の道に進むのではなく、むしろ少ないのですが、授業で何かを得て、それが彼らの将来に少しでも役に立ってくれたら。もしかしたら、いやたぶん、美術って我々の生活に何か明確な形をもって役に立つものではないかも知れません。もっと直接的に必要なものは他にたくさんあるでしょう。でも、一方で世の中のすべてのものは美術・芸術とも言えます。そのもっとも美しいものが君たち自身なのだと。そんな思いで「自分自身を完成させる」べく、歩んで行ってほしい。春が訪れる前の最も寒いこの時期は、美術科講師として彼らを次のステージへと送り出す特別な感慨にふける時期です。