拙が非常勤講師を勤める富良野高校美術科の授業では様々な体験授業を行っています。美術というのは幅広いもので、世の中すべてのものが美術であると言っても過言ではなく、その魅力はただ教室で絵を描いているだけでは伝わらないと思います。富良野は美術・芸術・ものづくりに関わる人が多く暮らす町です。その特色を生かし、美術に関わる方々を美術科の授業にお招きし、技術のみならず、その方がどういう経緯でその道に進まれたのかを聞くことで生徒たちのこれからの進路に何らかの影響を与えられるのではと思い、色々なジャンルの方に特別講師をお願いしています。今回は市内で活版印刷業「長岡屋」を営む長岡光宏さんをお招きし、「世界三大発明」のひとつ・活版印刷でオリジナル名刺作りに取り組みます。元々美術科ではデザインの課題に取り組んでいるのですが、そこに名刺デザインと活版印刷体験をまとめてくっつけたというわけです。活版印刷は古くから行われてきた印刷手段ですが、今となってはかなりアナログな技術になってしまい、活版印刷機も、それを扱う人も稀になりました。長岡さんは活版印刷に魅せられた人で、熱のこもった実技付きの授業を行ってくださいました。生徒のみならず先生が4人も美術室にお越しくださり、皆で興味津々、活版印刷体験をしました。今回は活版印刷についての説明と体験、また長岡さんが活版印刷屋になるまでの経緯も語ってくださいました。これから生徒たちはオリジナルデザインを考え、10月初旬にいよいよ印刷をします。特別授業を作るのは講師への依頼から事前の打ち合わせなど用意が色々と必要ですが、実際の授業を迎えると、やはり生徒の目の輝きが変わります。美術は幅広く、奥深く、楽しい世界です。そんな世界に触れて目を輝かせる生徒の様子を傍から見ていると、やはりうれしくなるものです。